フリートヘルム・ヘルマン(Friedhelm Herrmann)、マリオン・ブラッハ(Marion Brach)(独)

2020年11月5日改訂 

ワンポイント:【長文注意】。ヘルマンはウルム大学(University of Ulm)・教授、ブラッハは、リューベック大学(University of Lubeck)・教授で、ヘルマンの内縁の妻だった。1988年以来、血液学、がん学、遺伝子治療の分野で、ヘルマンは臨床研究、ブラッハは基礎研究を担当する共同研究で、約550報の論文を出版した。ドイツ生物医学界のスター科学者だった。1997年春(ヘルマン48歳、ブラッハ37歳)、研究室のポスドクのエバーハルト・ヒルト(Eberhard Hildt)が、データねつ造・改ざんを見つけ通報した。2000年、調査委員会は、明白なネカトが94論文、ネカト疑惑は121論文と結論し、ヘルマンとブラッハを有罪とした。37歳のブラッハは、ねつ造・改ざんを認め、リューベック大学を辞職し、米・ニューヨークに移住した。他方、49歳のヘルマンはネカトを認めなかったが、ウルム大学を辞職し、研究をやめ、街の臨床医になった。しかし、2004年、ドイツ政府はヘルマンを無罪とした。2020年11月4日現在、ヘルマンの撤回論文は21報である。かつて、ヘルマンは、「撤回論文数」世界ランキング の世界30位以内にリストされていた。なお、2000年の調査委員会が結論した94ネカト論文が撤回されれば、撤回論文数ランキングは世界第4位である。ネカト疑惑の121論文も撤回されれば、世界第1位である。国民の損害額(推定)は50億円(大雑把)。
この事件は、白楽指定の重要ネカト事件である:ドイツ科学界を震撼させたネカト史上の大事件だが、ドイツ政府の情けない対処で、ドイツの研究公正のいい加減さが表面化した事件。この事件を契機にドイツ政府はネカト対策に本格的に乗り出したと言われている。ただ、ドイツ政府はいまだにいい加減だ、と白楽は思う。

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